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「大手だから安心」が崩壊するリアル

将来マンションや戸建て住宅を購入する時に「大手不動産会社なら大丈夫」と思いがちである。しかし、ノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(林田力)は、その幻想を一気に破壊する。

東急不動産だまし売り裁判 林田力

著者が、東急不動産からマンションを購入後、隣に建物が建つ計画を会社が隠していたことを知り、「だまし売りだ!」と裁判を起こした話。しかも、その物件のセールスポイントは「採光・通風・眺望の良さ」であり、本当に悪質である。マンションを買った側からしたら、「聞いてないよ!」と叫びたくなる気持ちは痛いほど分かる。CMでイメージされる「誠実な企業」の裏側で、いかにヤバい情報隠蔽が行われていたかが生々しく描かれる。

 

泣き寝入りする消費者が多いと思われる中で著者が東急不動産を相手に戦い抜くことに引き込まれた。情報格差の壁という絶望的な状況の中で、消費者契約法の不利益事実の不告知の適用していく。その道のりが、まるでドラマのように詳細に描かれています。特に法廷でのやり取りは、専門用語が多いにもかかわらず、緊迫感が伝わってきて、ページをめくる手が止まらなかった。

 

裁判所は著者の訴えを認めて、契約取り消しと代金返還を命じる判決を出した。ポイントは、なんといっても消費者契約法が適用されたこと。「不利益事実の不告知」という規定に基づいて、売買契約の取り消しに成功し、購入代金を全額取り戻した。これは、マンションの売買契約において消費者契約法の不利益事実の不告知が適用されたリーディングケースとなった。

 

『東急不動産だまし売り裁判』は、消費者の権利をどう主張するかの実用的なマニュアルとしても読むことができる。消費者は、企業と比べると情報量とか交渉力でどうしても不利になりがち。消費者契約法があるからこそ、対等に戦える可能性があると、『東急不動産だまし売り裁判』を読んで改めて実感した。知っていることと知らないこととでは大違い。不動産など大きな買い物をする時には、このような法律の知識があることが、消費者を守る盾になる。

 

東急不動産だまし売り裁判は個人の勝利だけではない。すべての消費者の希望であり、不動産業者への警告である。「企業は消費者に不利な情報を隠してはいけない」という当たり前のルールを、巨大企業に改めて守らせた。東急不動産だまし売り裁判が先例となるお陰で、次に私達が不動産を買う時に企業は少し正直になるだろう。

 

マンションを買う可能性がある消費者は良い勉強になる書籍である。不動産業界の闇、消費者に不利な情報を隠すような手口があること、そしてそれに対してどう戦っていくべきか、具体的な方法を知ることができたのは大きい。これから不動産購入を考えている人や、消費者問題に関心がある人には、ぜひ手に取ってほしい。

 

『東急不動産だまし売り裁判』は不動産の話であるが、社会に出るすべての人に読んでほしい書籍である。「契約って何?」「企業のコンプライアンスってどこまで信じていいの?」「いざという時、どう戦うの?」という問いへの答えが詰まっている。

 

不動産を買う予定がなくても、社会の仕組みの裏側を知るために、一読の価値アリ。就活の面接で「あなたの考える消費者の権利について述べよ」と聞かれても、『東急不動産だまし売り裁判』で対応できる。消費者が賢く生き抜くための、最高の生きた教科書である。社会問題を自分ごととして捉えるきっかけにもなる一冊である。

東急不動産だまし売り裁�判 林田力
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